医療翻訳家のブログ

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イギリスの翻訳会社の正社員。20代。イギリスの片田舎に住んでいます。都会に引っ越したい。医療の知識なしで翻訳者になってしまいました。医療関係者ではない視点から、医療英単語やフレーズをどのように訳せばいいのかを解説します。

「いただきます」と言いさえすればいいのか

たまたま今アンガスビーフについての翻訳の仕事をしており、牛は殺されるんだよなとか、ベジタリアンについてとか、色々と連想していたらこの記事を書きたくなりました。

 

日本はベジタリアンの割合が人口の4.7%とかなり少なく、まだまだ身近ではありませんが、海外(というかイギリス)ではベジタリアンであることは普通のことです。ベジタリアンだけでなく、ペスカタリアン(魚は食べるが肉は食べない人)、ヴィーガン(乳製品含め動物性のものは食べない)など様々な種類があります。ちなみにあのビリーアイリッシュも生まれてからずっとヴィーガンです。

 

イギリスにいた時も、グループに1人は必ずベジタリアンがいました(イギリス人のベジタリアン割合は14%)。大勢でピザを頼むときも、「ベジタリアンの人ー?」と普通に聞かれます。レストランのメニューにもベジタリアンマークがついています。これほどベジタリアンが普遍的になっているんですよね。海外で「私、ベジタリアンなんだよね」と言うことは、日本で「私、目が悪いんだよね」と言うことと同じ感覚で、「ふーんそうなんだ」としか思われません。

 

私もイギリスにいるときは周りの影響を多分に受けて、ペスカタリアンになりました。肉を食べない人って、「肉を食べる」っていう行為自体をあたかも野蛮で傲慢だととらえていて、そのニュアンスはちょっと話をすれば伝わってきます。私はそういう考え方に共鳴して、「確かになあ、酷いよなあ」とか「食べるべきじゃないなあ」と思い始めました。家が若干仏教系なこともあり、本当は肉が大好き(中学生の時などは、親に「何食べたい?」と聞かれては「サイコロステーキ!」と言って怪訝な顔をされていました)なのですが、肉を食べるときについて回る罪悪感は常に心の奥にありました。

 

それに、ベジタリアンの人が周りにいると、「ベジタリアンである」ことが私にはとても高尚でかっこよく思えました。私は好きなものを好き勝手に食べているけれど、この人は動物愛護のため(かどうかは知りませんが)に抑制しているんだな、それってかっこいいじゃないかと。そうすると段々肉を食べる気が失せてきます。肉を食べるという行為によって、自分がまるで動物のように思えてくるんです。

 

それから決定的な出来事がありました。私はとある武道系のサークルに入っていたのですが、そのイギリス人の先生がこんな短い話をしたんです。

「子羊がラム肉にされるために連れていかれるとき、親羊はそれが分かって泣く。お前たちにその痛みが分かるか?ラム美味しい美味しいと言って食べているお前たちに。」

この言葉は衝撃でした。今でも胸の奥にずっとある言葉です。私はこれを聞いて、子どもを奪われる(それも殺されるために)時の親の気持ちは、人間と羊で大きな差があるのだろうかと思いました。羊も人間も同様に悲しみや痛みを持っている。その間に差がそれほどないのだとしたら、人間が羊を食べていい理由は何なのだろう?と考えました。理由は今でも分からないままです。

 

 

ただ私には日本でペスカタリアンであることを意思貫徹する強さはなく、お付き合いで食べたりすることもありますし、鶏肉は家でもたまに食べています。ベジタリアン対応のレストランを日本で見つけるのが難しく、それを言い出したら他人に迷惑をかけてしまうなと思って。言い訳であり、私の弱さですが。

 

日本はかなり食文化が豊かな国ですから、肉を食べないとなると「こんなに美味しいものが嫌いなんですか」と思う人も多いでしょう。別に食べたい人は食べたらいいと思います。無理する必要なんてない。

 

ただ思うのは、「店で売られているものがどういう過程で店に来たのか」まで頭を巡らせる人が少ないんじゃないかということです。ただただ、「わあ美味しそう」と思うだけで、その先まで考えない。それでいいんでしょうか。

 

これは肉だけの話ではありません。例えばTシャツが真っ白になる洗剤、CMでよく見かける洗剤を買う人は多いでしょうが、その洗剤が海水汚染につながっているのではないだろうかと疑問を持つ人はとても少ない。

 

自分にとって心地のいいものが他のものにとってもそうであるかまで考えられなければ、それは自己中心的です。他人、動物、地球に対して少しでも想像力を巡らせることができたら、世の中はどんなに変わることでしょうか?想像力は、持続可能な社会の基盤だとも思います。

 

ベジタリアン食は意外とおいしい

ところでベジタリアン食がどんなものなのか、馴染みのない人も多いかもしれません。ベジタリアン食って意外に美味しいんですよ。イギリスには様々な人口肉が売っていて、色々試すのが楽しかったです。美味しいものも多く、「これがヴィーガンなのか、すごいな」とびっくりします。

 

おすすめはLINDA McCartney'sシリーズ。何を食べても美味しいです。イギリスではQuornもポピュラーですが、こちらはやや当たり外れがありますね。ステーキが確か酷い味だったような。

 

私は肉が好きだと書きましたが、美味しい人口肉を食べると「ああ美味しい」と心から思えるのと同時に、「私の食が動物の死にはつながっていない」という安心感が付いてきます。心がより解放される気がするんですよね。日本でももっと人口肉を売ってほしいな。

 

とはいえ日本でも、例えばバーガーキングモスバーガーベジタリアン対応の商品を出しています。どちらも美味しいですよ。お試しあれ。

 

それではまた。

 

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