医療翻訳家のブログ

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イギリスの翻訳会社の正社員。20代。イギリスの片田舎に住んでいます。都会に引っ越したい。医療の知識なしで翻訳者になってしまいました。医療関係者ではない視点から、医療英単語やフレーズをどのように訳せばいいのかを解説します。

コロナで破産した英ファッションブランドたち...Cath Kidston, Oasis, Warehouse, Laura Ashley その理由とは

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こんにちは。ここ1ヶ月は日本でも自粛が続き、飲食店など大変な思いをしている所が多いのではないかと存じます。

 

私の会社もブラック企業化してきていて、正直に言って翻訳だけの生活を考え直しています。

 

さてイギリスではここ最近、コロナ危機を乗り越えられなかったファッションブランドが次々と破産してしまっています。本当に悲しいことです。

 

彼らはなぜ破産してしまったのでしょうか?どうやら原因はコロナの打撃だけではないようです。

 

 

Cath Kidston

 

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ファンの方は知っていると思いますが、Cath Kidston(キャスキッドソン)はイギリス内の全60店舗を閉めてしまいました。これによって900人もの仕事が失われるらしいです。オンラインストアは引き続きオープンしているみたいです。

 

日本のニュースではコロナ関連の倒産とのみ書かれていますが、こちらのメディアはコロナは直接的な原因ではあるものの、倒産の原因はブランドのマーケットが限られていることや、ちょっと古い流行であることを指摘しています。

 

Cath Kidston: What went wrong? - Retail Gazette

 

Despite there being lots of reasons for Cath Kidston’s downturn, its biggest challenge was the niche nature of its product offering, and therefore the limited addressable market.

It is also arguably of its time – the late 90s into the 2000s – but marketable nostalgia is hard to maintain. An era of austerity may well make people hark back to a simpler time, but does that put them in the market for a £45 wicker shopping bag?

 

この記事によれば、キャスの破産には様々な理由があるものの、一番大きな課題は製品の本質的なニッチさ、つまり市場が限られていること。それから製品が時代遅れであること(wickerは枝編み細工のこと、wicker shopping bagで編みかごバッグということです)を指摘しています。

 

ちなみにここで出てくる単語の訳は、

austerity 厳しさ

hark 耳を傾ける

wicker 枝編み細工の

となります。

 

花柄好き!って人もいますが、私にはちょっと可愛いすぎるかな。って人もいるでしょう。特に女性が主なマーケットになってしまっていますから、全人口の半分をマーケットから除外してしまっていますよね。でも長年続いた有名なブランドが消えるのを見るのは悲しいことです。心が痛みます。

 

Oasis, Warehouse

 

Oasis, Warehouseは、どちらも同じMosaic Fashionsという会社の傘下にあるブランドです。値段は安めで、若年層をターゲットにしていると言えるでしょう。

 

こちらのブランドの経営も、どうやらコロナ前から傾いていたようです...。

However, insolvency partner at law firm Shakespeare Martineau, Sean Moran, argued that Oasis & Warehouse were both struggling, and a combination of reduced footfall on the high street, high rents in some unprofitable stores and difficulties in securing access to credit lines caused the firm to collapse.

Last year, Oasis & Warehouse was faced with difficulties as certain key credit insurers stopped offering credit to their suppliers, and a number of non-profitable stores were closed to protect profits.

(出典:https://www.retailgazette.co.uk/blog/2020/04/oasis-warehouse-what-went-wrong/

 

こちらのブランドは、繁華街(the high street)の客足が減少したこと、利益を出していないショップの賃貸料が高いこと、それからお金を貸出してくれる機関が少なかったことが倒産を招いたとされています。

 

単語:

reduced footfall 遠のいた客足 - 逆に増加した客足はincreased footfallと言います。動詞で「客足を伸ばす」はincrease footfallです。

credit lines 信用与信枠(銀行が融資先に貸し出す限度額)

 

Laura Ashley

 

ローラアシュレイは3月中旬、早々に経営破綻を発表しました。が、最近になって米国のコンサル会社ゴードン・ブラザーズに買収され、存続するみたいです。

 

さて経営破綻の原因は?

 

https://www.standard.co.uk/fashion/laura-ashley-administration-what-went-wrong-a4389986.html

 

この記事は結構長いのですが、破産の原因としてはやはり時代の変化とそれに追いつかなかった花柄ブランド...というのが主要になってくるようです。

With the owners departed and the frilly aesthetic at odds with the pervading flesh-baring minimalism of the nineties, Laura Ashley fell on hard times. And in truth, it never really recovered. 

 オーナーが85年に亡くなり、90年代は肌を露出した(flesh-baring)ミニマリズムの時代になり、結局その影響から復活できなかったようです。

2019年に若者向きのブランドUrban Outfittersとコラボしたりして、復活を何度も試みているのですが、うまくいかなかったのでしょうか。

 

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ローラアシュレイもキャスキッドソンも、花柄メインということが共通点にあります。花柄は可愛いですが、結局これはビクトリア時代の名残なんですよね。90年代のファッションの変化、ミニマリズムについていけなかったというのはよく分かります。

それとローラアシュレイの服は、シルエットが若者向きではないんですよね。あと値段も、ですが...

花柄もやるし、その他のパターンもある...というような(要は他のブランドのような)ブランドに変わっていたら存続していたのでしょうか。分かりません。

 

破産関連単語、administration

最後に英単語を。このような破産関係の話になると、イギリスで必ず出てくる単語がアドミニストレーション(administration)です。これは

fall into administration

go into administration

など、色々な形で使われます。「破産申請をする」などと訳されますが、実際行われるのはアドミニストレーター(administrator)と呼ばれる人たちが、企業を救済することを目的に色々と試行錯誤することなんです。そして、どうしても救済が合理的に不可能という場合に倒産となるようです。

 

で、ローラアシュレイは買収され、存続可能となったので、このアドミニストレーションの成功例なんですね。ですのでローラアシュレイは、Rescured from administration(アドミニストレーションによって救済された)と言われます。良かったですねー。これからも頑張って存続してほしいものです。

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