医療翻訳家のブログ

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イギリスの翻訳会社の正社員。20代。イギリスの片田舎に住んでいます。都会に引っ越したい。医療の知識なしで翻訳者になってしまいました。医療関係者ではない視点から、医療英単語やフレーズをどのように訳せばいいのかを解説します。

日本語にない概念①present

ブログの更新が滞っておりました。こんにちは。

 

今回からは、「日本語にはないけれど英語にはある概念」をシリーズとして紹介していきたいと思います。

 

そもそもなぜ言語は存在するのか

そもそも言語はなぜ存在するのでしょう?コミュニケーションのため、同じ概念をラベリングしてそれについて話すため?根本的に言うと、言語は世界を分節化するためにあるんです。つまりこの世に存在するモノ、事、生き物、概念などを他と区別するため。あるいは自分と切り離して考えるために存在するわけです。存在に「言葉」をくっつけて初めて、それについて語れるようになりますよね。

 

この分節化の方法は万国共通なわけではありません。その方法には様々なバックグラウンド、例えば文化や環境などが関わっています。例えば日本語は、「色」に関する単語や、「感情」に関する単語が非常に多いと言われています。また「気」のつく言葉も多いですね。「気」という概念そのものは英語にはないので、訳す時は「言い換え」をしなくてはなりません。

 

いわば、言語とは「世界の切り取り方」だと思っています。日本語を学ぶということは、日本語、つまり日本人の世界の切り取り方を知るということ。そこには計り知れない長さの歴史と習慣が表れています。英語も然りです。当然、英語にあって日本語にない表現や単語もたくさんあるのですよね。私はこれらを知ることは言語を超えて概念を身につける事になると考えています。母国語以外の言語を学ぶことの醍醐味って、究極的にはこれですよ。日本語では得られないような新しい概念を身につけることです。

 

Presentの意味

さて今回はpresentという単語。プレゼントという意味もありますが今回は、「現存する」という意味に焦点を置きたいと思います。

 

「現存する」と日本語で言うと哲学的な意味になってしまい、日常用語ではありません。でもネイティブはpresentを日常用語として用いるのですよね〜。

先日瞑想クラスに参加した時、瞑想が終わって感想を言う場面で、ある人が More presentだったと言っていました。それに対する先生の返答は、「私たちは普段、過去について考えたり未来について考えたり、時間を行ったり来たりしている。でも瞑想をしている時は確かに現在に目を向けていますね」というものでした。つまりmore presentと言ったのは、「(過去や未来ではなく)現在に根を下ろしている」という意味だったのですね。

 

辞書を引くとこんな例文があります。

I was present during the meeting.

私はミーティングにいましたよ。

 

ちなみにこの文はどうでしょう?

I was at the meeting.

私はミーティングにいました。

 

日本語だと意味は同じです。でも英語にすると、前者の文はpresentに強調があると思うのです。「私ちゃんといたよ!」って感じ。一方後者の文は「自分がどこにいたか」に重きが置かれている。「スーパーでも家でもなく、ミーティングにいました」という意味寄り。(主観です)

 

I was present と言われると多くの日本人がピンと来ないと思います。意味が頭で分かっていても、とっさに反応できない。それはその概念が日本語にはないからです。概念をすぐに自分の中に取り入れることは難しいですが、使っていくうちに自然に使えるようになり、逆に日本語で話す時に「えっとこれってなんて言えばいいんだっけ」と困るようになりますよ〜。

 

それでは今日はこのへんで。

 

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