医療翻訳家のブログ

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イギリスの翻訳会社の正社員。20代。イギリスの片田舎に住んでいます。都会に引っ越したい。医療の知識なしで翻訳者になってしまいました。医療関係者ではない視点から、医療英単語やフレーズをどのように訳せばいいのかを解説します。

柔らかい割り当て

今日は調べ物のお話を少し。前回、翻訳者には調べ物を厭わない気力がなくてはならない、というお話をしました。翻訳者の間で、この調べ物の質の差はどういったところに出てくるのでしょうか。

 

「柔らかい割り当て」

 

こういう訳を提出してくる翻訳者がいます。下訳のつもりなのだろうか?

 

当然これでは何のことかわかりません。柔らかい割り当て。ちょっと面白いですが、こういうのを出されるとチェッカーをやる方としてはイライラします。

 

これ、実はsoft quota の(誤)訳なんです。soft quotaは日本語の対訳がないので、ネットで調べても訳が出てきません。それで、このグーグル翻訳みたいな訳になってしまった…という話なんですね。

 

気持ちは分からなくもないですが、日本語にないからといって訳すことを諦めてはなりません。

 

英語に存在する言葉なのですから英語で調べてみましょう。日本語でも、小説を読んでいて難しい言葉が出てきたら意味を調べますよね?それと同じように、分からなくて日本語訳が出てこないときは英英で調べてみましょう。

 

“Soft quota meaning” と入れて検索をかけると、以下が見つかります。

 

A quota where it is permissible for the survey to be considered complete even though the quotas has not been filled, provided that there is not a large difference between the specified size of the soft quota and the achieved number of interviews in the sub-group.

 

要は、割り当て(これは市場調査などで用いる、集めるべきサンプル数とその種類のことです)が完全に満たなくても、書いてある割り当てとサブグループごとの調査数に大きく差がなければ調査を終わりにしていいですよ、ということなんですね。一言で言うとゆるい割り当てと言えるでしょう。

 

意味がわかったら今度は適当な日本語にしましょう。意味をそのまま書くと長すぎてしまうので、言い換えをします。例えばそうですね、割り当て(厳密なものではない)とするのはどうでしょうか。意味は伝わりますし、soft quotaのニュアンスが出るので良いのではないでしょうか。

 

もし文字数に余裕があるなら、「提示されている割り当てと大きな差がない限り」など、もう少し説明を加えても良いと思います。

 

翻訳をしていて分からないことが出てくることはしょっちゅう、というかほぼ毎回あります。そこで諦めてしまうのではなく、それまでとは違った方法で調べてみることが重要です。

 

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