医療翻訳家のブログ

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イギリスの翻訳会社の正社員。20代。イギリスの片田舎に住んでいます。都会に引っ越したい。医療の知識なしで翻訳者になってしまいました。医療関係者ではない視点から、医療英単語やフレーズをどのように訳せばいいのかを解説します。

イギリス プレマスター/ディプロマはやるべきなのか?

イギリスの学位のシステムは日本のものと根本的に違います。日本のシステムはとても分かりやすいですよね。基本的に大学以上だと学士、修士、博士の三つしかないですから。

 

イギリスの学位は本当に様々で、卒論を書くか書かないかで学位の種類が変わったりもします(学位について分かりやすく説明してあるページがこちら)。私は今年からイギリスで修士課程をやっていますが、去年はイギリスの違う大学でGraduate Diplomaというコースをやっていました。さっきのリンクで言うと私がやったのはPostgraduate Diplomaになります。まあ学生にはプレマスターと言った方が分かりやすいのでプレマスターとか言ってますが。しかしディプロマはイギリスでもとてもマイナーな学位で、「去年プレマスターやったんだ」と誰に言っても「何それ?」と言われます・・・。

 

ディプロマがどんなコースなのかは大学によって変わってくるのですが、私の大学ではUndergraduateの授業で自分の専攻を学ぶ+Postgraduateとして英語のライティングの授業を受ける+Critical Thinkingの授業を受けるという構成でした。Critical Thinkingは英語圏の人がとても重視する「論理的思考」を学び、論理的、合理的な論文を書くというものです。しかしこのクラス、先生がかなり適当な人だったので、正直に言って学んだことは何もありません。私は論理学の触りをやったことがあったので、教わることのほとんどが知っていることだったということもあり・・・。

 

それはさておき、今日はぶっちゃけプレマスターやディプロマはやる意味があるのか?!という話。イギリスで修士取得を考えている人にとっては選択肢としてあるかもしれません。

 

私は最初からディプロマをやろうと思っていたわけではありません。というのも、去年修士課程に申し込んだ際、出願した大学の先生とスカイプで面接をしたんですね。そこでディプロマを最初にやることを勧められました。悩んだのですが、その後色々な人と相談した結果、いきなり修士をやるのではなくディプロマから進むことにしました。先生がディプロマを勧めた理由は私の専門知識が足りていないということでしたが、正直ディプロマをやって専門知識が十分になったかと言われると眉唾ものです。でもいきなり修士をやった方が良かったかと言われると全然そうは思いませんし、今年修士課程に合格できたのはディプロマをきちんと終えられたからだと思っています(し、こちらの先生にもそう言われました)。つまりディプロマをやることには欠点と美点両方があるので、絶対におすすめです!とも言えないし、かといって日本の大学を出たすぐ後にイギリスで修士課程をやることがいいとは思えません。

 

しかしあえて結論を出すならば、お金があればやるといいと思います。私はなかったですが。。

 

以下ディプロマのメリット、デメリットをあげてみます。

 

ディプロマ・プレマスターのメリット

 

1.イギリスの学校や生活に慣れるので、スムーズに修士に進むことができる

 

私のディプロマコースは10ヵ月間でしたが、その間にイギリスの風潮を知り、生活にも慣れました。それから去年の反省が色々とあるので、それを今年に生かそうと今努力しています。もしディプロマをやらずに修士に行っていたら全く違った生活になっていたでしょうし、満足できない部分が多く残ったかもしれません。とにかく、1年というのは短いです。もっと言えば留学生が一年で修士をやるのは結構無理があります。

 

2.英語にも慣れる

 

英語が伸びると言っているわけではありません。慣れるんです。つまり英語の理解できない部分をカバーするための状況把握力が上がったり、耳もイギリス英語に慣れます。話し方もスムーズにはなります。つまり生きた英語がどういう感じかをつかみ、それに上手く乗っていく方法を体得することができます。これは英語力のうちの「慣れ」の部分だと思っています。

 

しかし英語の根本的な部分は自分でコツコツやるしかないと思います。やはり英語を使う上で土台となる(文法、単語など)部分に欠陥がある人はイギリスに来てもずっとそれを引きずることになるので、伸びるわけがありません。そういう人を何人も見てきました。グーグル翻訳みたいな英語をしゃべっている人とか・・・。留学を検討している人は、まずイギリスに来る前に自分の根本的な英語力に欠けがないか確認しましょう。関係代名詞を適切に使えますか?仮定法と仮定法過去の使い分けはきちんとできますか?間接話法、直接話法を使い分けられますか?

 

私はベースとなる英語知識は十分にあると自分で思っています。ですが、ディプロマを終えて日本に帰った際「英語ペラペラになった?」とよく聞かれるのですがそんなことはありません。当たり前のことなのですが、イギリスに来てネイティブには決してなれないんだなと痛感しました。というのも、自分の言いたいことが何とか言えても、その表現をネイティブがよく使うかと言われればそうでなかったりするのです。ついついくどい言い方になってしまったりします。英語で言いたいことが言えるのと、ネイティブと同じようにコミュニケーションが取れるのとではレベルが全然違うのです。それでも私はできるだけネイティブと同じようにコミュニケーションが取りたいと思っているので、現在はネイティブの使う自然な表現のコレクション・暗記をしています。

 

3.エッセイの書き方を一から教えてもらえる。

 

英語が出来れば英語のエッセイも楽に書けると思われるかもしれませんが、それは大きな間違いだと思います。英語ができることと英語で良いエッセイが書けることはまた違う話です。なぜなら英語のエッセイはある程度書き方が決まっていて、日本語と同じではないからです。論理展開、パラグラフの置き方、論文らしい言い回し、論文で使われる動詞や名詞など、英語特有のやり方を知らなくてはいけません。ディプロマコースではそれをみっちり丁寧に教えてくれ、また添削も快くしてくれるので、論文を書くに当たってとても役に立つコースだと思います。

 

それらは独学でできないんですか?と言われれば、できます。日本でも英語論文の書き方集など売っていますし、またIELTSのライティングなんかも論文を書く練習になるでしょう。語学を一人でもコツコツ学べる人は自分で論文の書き方を学ぶのも手だと思います。そしてイギリスの修士課程に行くだけの専門知識が十分にあると思う人は、ディプロマをやる必要はないと思います。

 

しかし大抵の人は独学を極めるのは厳しいと思いますし、クラスに入って色々な課題をこなしていき、ネイティブの添削も受けながらやっていくのは一つの選択肢としてありではないでしょうか。それに勉強だけでなく、生活面でイギリスに慣れる、というのはとても重要だと思います。

 

 

ディプロマ・プレマスターのデメリット

 

1.お金も時間もかかる。

 

言うまでもないですが、お金も時間もかかります。

ですが、大抵の学校の修士課程が卒業生割引というのを設けていて、ディプロマを終えて同じ大学の修士課程に進めばその割引を受けることができます。私の行っていたところは成績によって割引率が変わるシステムでした。一番上の成績(first)が取れれば三割ほどの割引だったので、結構大きいですよね。とはいえ私は大学を変えてしまったのでその特典は受けられなかったですが。。。

 

2.UndergraduateではないしMastersでもないという中途半端な身分になる。

 

ディプロマの学生は(少なくとも私の行っていた大学では)、自分の専門の学部に所属するわけではなく、「国際学部」のような微妙な学部に所属することになります。そしてUndergraduateの授業にも出るのに、身分はPostgraduate、でも修士ではない・・・という訳の分からない身分で過ごさなくてはなりません。これは普通に生活していて苦ではないのですが、半年しかないUndergraduateの授業で友達を作るのはなかなか大変ですし、かといって私の時のディプロマのクラスメートは10人以下でしたので、人によっては友達作りに結構苦労するかもしれません(私は苦労しました)。

 

3.課題がとても多く、場合によっては修士以上に大変。

 

Undergraduateの授業も課題がみっちりでます。そしてディプロマの学生は、英語ライティングの授業にもエッセイを出さなくてはいけません。なので期末の時期は普通のUndergraduateよりも忙しいです。私も死にかけながらなんとか提出しました。。。でもこの課題地獄は今年の論文を書くのを支えてくれるだろうと信じています。

 

 

以上メリットデメリットを簡潔にまとめました。ここに書いたのは個人的な話ですが、ディプロマをやろうか迷っている人は自分の知識、英語力、時間、お金と相談して決めるのが最善だと思います。日本の大学の先生、こちらの大学の先生に話を聞くのもいいでしょう。ただ日本の先生はディプロマのことをほぼ知らないと思いますので、説明することが必要です。

 

それでは。

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